経営と政治、二つの世界で見えた「人を動かす力」


前に進めることが、
いつも最善とは限りません。

ときには立ち止まり、
まだ言葉になっていない声に
耳を澄ませる。

その時間があるからこそ、
決断は独りよがりではなくなり、
人を動かす力へと
変わっていくのだと思います。

目次

「決める力」と同じくらい、「聴く力」が必要だった

経営者である私が議員になって、
最初に強く感じたことがあります。

それは、
時間の流れがまったく違う
ということでした。

経営の世界では、決めたら動く。
必要だと思えば、すぐに実行する。

数字を見て、結果を確かめ、改善を重ねる。
変化の速い時代において、
スピードは力そのものです。

もちろん、
すべてを急げばいいわけでは
ありません。

それでも経営には、
「今ここで決める」という覚悟が
求められる場面が数多くあります。

一方で、
政治の世界は違いました。

自分ひとりが
「これが正しい」と思っていても、
それだけでは進みません。

行政の仕組みを理解すること。
限られた財源を考えること。
地域に暮らすさまざまな方の声に
耳を傾けること。

そして、ときには
自分とは異なる意見とも
向き合いながら、
納得できる合意点を探していくこと。

そこには、
経営とはまた違う難しさがありました。

経営では、「誰に届けるか」を
ある程度絞ることができます。

商品やサービスを必要としている方に、
よりよい価値を届けるために、
戦略を立てることができます。

けれど、議員という立場は違います。

年齢も、暮らし方も、
抱えている課題も異なる、
多くの方の声に向き合う必要があります。

誰か一部のためだけに
意思決定をするのではなく、
地域全体にとって何がよりよいのかを
考え続けなければなりません。

だからこそ、
簡単に答えを出せないこともあります。

けれど私は、
この違いのなかにこそ、
大切な学びがあると感じています。

「聴く」は、ただ意見を集めることではない

議員という立場を
経験させていただくなかで、


私は以前よりも深く、
「聴くこと」の価値を
考えるようになりました。

経営者の世界では、どうしても、

  • 決める力
  • 動かす力
  • 形にする力

が評価されます。

それは今も、
間違いなく大切な力です。

思いを形にし、
組織を前へ進め、
成果につなげる人がいなければ、
未来は変わっていきません。

ただ、前へ進めるために必要なのは、
それだけではありませんでした。

  • 聴く力
  • 受け止める力
  • 違いのなかから合意をつくる力
  • 自分には見えていない景色を想像する力

こうした力もまた、
人や組織、地域を動かしていくために
欠かせないものです。

「聴く」とは、
ただ相手の言葉を
最後まで聞くことではありません。

相手が何に困っているのか。
なぜその言葉を口にしたのか。
言葉にはなっていないけれど、
どんな願いや不安を抱えているのか。

そこまで想像しようとすること。

それが、本当の意味で
相手を尊重することに
つながるのではないかと思うのです。

正しさだけでは、人は動かない

どれほど正しい提案でも、
相手の思いを置き去りにしてしまえば、
人はついてきません。

どれほど早く決断できても、
背景や事情を理解しないまま進めば、
信頼は長く続きません。

スピードだけでは、人はついてこない。
正しさだけでは、人は動かない。

「こうすべきです」
と押し切ることよりも、
「あなたはどう感じていますか」
と尋ねること。

自分の答えを伝えることと同じくらい、
相手の声を受け止めること。

その両方があって初めて、
人は安心して同じ方向を
向けるのだと思います。

相互尊重コミュニケーション®︎でも
大切にしているのは、
どちらか一方を
我慢させることではありません。

自分の思いも大切にする。
同時に、相手の思いも大切にする。

決める力と、聴く力。
動かす力と、受け止める力。
成果を生み出す視点と、
多様な声に耳を傾ける視点。

どちらか一方ではなく、
両方を持つこと。

それが、これからの時代に求められる
リーダーの姿ではないでしょうか。

二つの世界で得た学びを、未来のために

経営者として培ってきた
「前に進める力」

議員として学ばせていただいている
「立ち止まって聴く力」

一見すると、この二つは
正反対に見えるかもしれません。

けれど今の私は、
この二つが掛け合わさったときにこそ、

人も、組織も、地域も、
よりよい方向へ動いていけるのではないかと
感じています。

決める人であると同時に、
聴ける人であること。

動かす人であると同時に、
声を受け止められる人であること。

39歳という年齢で、
政治と経営という二つの世界を
経験させていただけていることに、
心から感謝しています。

この経験を、
一人でも多くの方の
お役に立てられるように。

そして未来を生きる子どもたちの声に、
真摯に耳を傾けられる
大人であり続けられるように。

これからも、
学び、考え、
行動し続けていきたいと
思います。

     

一般社団法人
相互尊重コミュニケーション協会代表理事 
渡辺 佳菜

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